南日本新聞社説( 11/19 付 )
[汚染米出荷停止] 検査態勢の再構築急げ
福島市大波地区の農家1戸のコメから、国の暫定基準値(1キログラム当たり500ベクレル)を超える同630ベクレルの放射性セシウムが検出され、政府は大波地区でことし収穫されたコメについて、出荷停止を福島県に指示した。
東京電力福島第1原発事故後、コメの出荷停止は初めてである。当該農家が収穫したコメ840キロは流通しておらず、廃棄処分される。
大波地区のコメは、国が定めた方法で福島県が実施した行政検査を通過し、出荷が認められていた。基準値超えは、生産者の依頼で地元JAが実施した自主検査で判明した。
行政検査のほころびが露呈し、消費者の不安や疑念が広がりかねない事態である。政府はより信頼性の高い検査態勢の再構築を急ぐべきだ。
農林水産省は8月、コメの放射性物質を収穫前の「予備調査」、収穫後の「本調査」の2段階で検査する安全確保策を打ち出した。本調査で暫定基準値を超える地点が1カ所でもあった場合、地域全体を出荷停止として全量廃棄を義務付ける方針だった。
福島県は10月までに県内48市町村で2段階調査を実施し、大波地区を含む1174地点の全検体が基準値を下回った。佐藤雄平知事は先月12日にコメの「安全宣言」を出し、安全確保は万全なはずだった。
政府はまず、なぜ汚染米が行政検査の網をすり抜けることができたのか、徹底的に検証すべきである。
同じ地域でも、個々の田んぼによってセシウムの数値が異なるケースは確認されていた。福島県二本松市の旧小浜町地区では、9月の予備調査で暫定基準値と同じ1キログラム当たり500ベクレルのコメが見つかった。同じ地区のほかの田んぼのコメは、最高でも110ベクレルだった。
こうしたホットスポットのような場所が確認されたら、検体を増やすなどして、汚染米のすり抜けを防ぐべきだったのではないか。数値の高い場所に共通する地形や環境面での特徴が認められたら、同じような場所は検体を増やすといった対応も検討すべきである。
原発事故の影響で今年の新米は価格の暴落が心配されたが、これまでのところ昨年を上回る高値が続いている。今回の放射性セシウムの検出が、消費者の購買動向に影響を及ぼす可能性もある。政府は安全の確保はもちろん、産地による極端な価格差が生じないよう監視を強める必要がある。
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