2012年3月5日月曜日

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BP PRESSから全文引用
放射能に敏感すぎる流通業界と政府の鈍感
狭間で振り回される水産加工業者

2011.11.21(Mon) 高成田 享
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/29773


 大手スーパーの一部が「少しでも放射能が検出された食品は販売しない」という措置を取り始めたことで、被災地の水産業界に困惑が広がっている。
 国の魚を含む食品に対する「暫定規制値」が「500ベクレルキログラム」(飲料水、牛乳・乳製品は200ベクレル)なのに対して、「ゼロベクレル」という基準が厳しすぎるためだ。実際、すでにいくつかの水産物セシウムが検出されたため、その市場から出荷される同じ産物は購入停止になっているという。
残留農薬には「ゼロ」を求めないのに・・・
 48ベクレルキログラムのマダラが見つかったために、マダラを締め出されたある魚市場の関係者は、「国の規制値の10分の1以下の水産物がたまたま出たことで、もうそれを買わないというのは、産地にとっては厳しすぎる対応だ。大手スーパーは米国の圧力に屈して、日本の産地を滅ぼそうとしている」と憤る。
グリーンピースがスーパーの食品を対象に実施している「食品放射能調査」結果資料の一部
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 突然、日本の市場を狙う米国の陰謀説が出てきたのは、食品の放射能汚染について、グリーンピースなどの環境保護団体が大手スーパーの食品について調査結果を公表するなどして、目を光らせているためだ。
 確かに国産農水産物の多くからセシウムなどが検出されるようになれば、農水産物を米国からも輸入するしかなくなる。だが、国内の生協でも同じような措置を取っているところもあるから、米国の陰謀というよりは、消費者の不安が大きいということだろう。
 消費者にとって「検出されず」の方が安心できるのは当然で、大手スーパーがそれになびくのは仕方のないことかもしれない。とはいえ、「体重60キロの日本人なら、体内にカリウム40という放射性物質が4000ベクレル存在する」(核融合科学研究所総合研究大学院大学)などと言われると、ゼロという基準は厳しすぎるのではないかと思う。
 食べ物の安全という点で思い出すのは、農産物残留農薬基準である。厚生労働省は流通を規制する残留農薬の濃度を公表してきた。しかし、消費者の中には、この規制値に満足せず、無農薬や低農薬の農産物を求める人たちもたくさん出てきている。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/29773?page=2
 私が気になるのは、残留農薬にはゼロを求めない大手スーパーが、放射能になるとゼロを求めていることだ。消費者の「風評」に過敏に反応しているように思えるのだ。
 生産者も消費者も、検査の結果に強い関心を持っているのは当然だから、大手スーパーも含め、いろいろな検査結果が公表されることは、消費者にとってはありがたい話だ。しかし、消費者にとって、データの数値とともに知りたいのは、その数値がどういう意味を持っているか、ということだ。ゼロベクレルと500ベクレルとの間の広大なグレーゾーンにある食べ物をどう考えたらいいのかということになる。
福島漁業者の訴えを「場違い」と退けた水産庁
 大手スーパーの動きにちょっと過敏だと思ったが、お役所の方は相変わらず鈍感だと思う経験をした。
 先日、農林水産省太平洋広域漁業調整委員会東京で開かれ、委員である私も出席した。その中で福島県漁業者が、「震災による原発事故以来、福島沿岸漁業者は操業を自粛している。一体いつになったら、出漁できるのか」という悲痛な訴えをした。
 その時の水産庁側の答えは、「漁業調整委員会は漁業の資源管理を主題とする会議であり、放射能の影響や対策は場違い」という趣旨だった。
 「当該魚種(太平洋北部沖合性カレイ類)のように、産卵場および生育場が比較的沿岸にある種については、津波の影響による産卵場の破壊、育成場の環境悪化等により、再生産に悪影響がおよぶ可能性にも留意する必要がある」
 これは、農水省の事務局が用意した資源回復計画の評価で、東日本大震災による津波で産卵場などが破壊された可能性があると言及している。


http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/29773?page=3
 しかし、いま東日本漁業者にとって、最も深刻な漁業資源問題は、原発事故による放射能の影響だろう。漁業資源が量的に問題なくても、放射能汚染があれば、漁業という営みができなくなる。
 そう考えれば、資源管理の全般を扱う漁業調整委員会であれば、放射能問題について、農水省あるいは水産庁として現時点での見解を語れる担当者や研究者が出席するのが当然だろう。いくらアンコウの資源が回復していると評価してみても、漁業者にとっては出漁できなければ何の意味もない。縦割りの役所の鈍感さに、出席した漁業者はがっかりしたのではないかと思った。
 復興が遅れていた被災地の水産加工分野だが、3次補正予算で、ある程度の復興予算が見込まれるようになり、水産加工業者の復興計画にもはずみがつきそうだ。
 しかし、加工業者が気にするのも放射能の影響だ。「せっかく新たな借金を背負って加工工場や冷蔵庫をつくっても、放射能汚染の問題が出てくれば、すべての計画が狂ってしまう」と、多くの加工業者は言う。
 放射能に対する民間の敏感さと官僚の鈍感さの間に、水産関係者は振り回されている。

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